海鳴りの島から2

目取真俊のブログです

読書/書評

本の紹介/与並岳生著『沖縄記者物語2 キセンバル 基地沖縄最大の反戦闘争』

以下の文章は『監視社会ならん!通信』N0.66に掲載されたものです。 今から半世紀ほど前の1970年代半ば、沖縄の反戦闘争の歴史のなかでも特筆すべきたたかいが取り組まれた。喜瀬武原実弾演習阻止闘争である。米軍が105ミリ・155ミリ曲射砲(榴弾…

仲宗根政善『ひめゆりと生きて』に記録された日本軍による沖縄兵の虐殺

5月2日の沖縄タイムスは、自民党の西田昌司参院議員の「ひめゆり発言」から1年を迎えるということで特集を組んでいた。私も前日にインタビューを受け、発言がまとめられて19面に載っている。関心のある方はご一読ください。 ひめゆり学徒隊について考え…

憲法9条の成立と沖縄の米軍基地の強化

憲法記念日ということで、メディアは憲法9条の改憲に向けて動きを強める高市政権に焦点を当てながら、色々と特集を組んでいる。 日本各地で憲法講演会も開かれるが、そこでも焦点となるのは憲法9条だろう。 しかし、憲法9条をめぐって交わされる議論の中…

書評/渡辺清著『海の城 海軍少年兵の手記』(角川新書)

以下の文章は、『監視社会ならん!通信』61号(2025年7月10日発行)に掲載されたものです。『監視社会ならん!通信』は辺野古ゲート前のチラシコーナーにも置かれています。ぜひ手に取ってみてください。 著者の渡辺清は1925年に静岡県で生まれ、16…

街中の小さな書店を残したい

9月18日に大阪の隆詳館書店でトークショーに参加させてもらい、店主の二村知子さんとノンフィクションライターの木村元彦の3人で、沖縄戦や教科書問題、基地問題などについて話した。 隆詳館書店では、著者を招いてのトークイベントを300回以上開催し…

書評/石井暁著『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』(講談社現代新書)

以下の書評は2020年3月10日発行「監視社会ならん!通信」29号に掲載されたものです。 2013年11月27日、共同通信社会部から1本の記事が配信された。翌日、同社加盟31紙がその記事を1面トップで掲載した。記事の内容は、陸上自衛隊内に総…

紹介:岡本有佳・金富子責任編集『〈平和の少女像〉はなぜ座り続けるのか』(世織書房)

岡本有佳・金富子責任編集『〈平和の少女像〉はなぜ座り続けるのか』(世織書房)定価800円+税 以前、世織書房から送っていただいた本なのだが、今こそ多くの人に読まれてほしい1冊だ。 http://fightforjustice.info/?services=shojo_naze http://fight…

高度約550メートル

アニー・ジェイコブセン著/加藤万里子訳『ペンタゴンの頭脳 世界を動かす軍事科学機関DARPA』(太田出版)に次の記述がある。 〈第二次世界大戦中、ひとり娘がまだ幼かったころ、フォン・ノイマンは日本の原爆投下地域の決定に関わった。しかし、それ…

『沖縄と国家』」

辺見庸氏との対談が1冊にまとめられた。8月10日に発売される。ご一読を。

与並岳生著『沖縄記者物語2 キセンバル』(新星出版)

1970年代半ば、県道104号線を封鎖して行われる米軍の実弾演習を、沖縄の労働者・学生は着弾地の山中に潜入し、体を張って演習を中止に追い込んだ。喜瀬武原(キセンバル)闘争と呼ばれるその闘いは、日米安保体制に風穴を開けたものとして、戦後沖縄…

大田昌秀・大江健三郎編集『沖縄経験』1~5号

5・15を前後して、だいぶ前に古本屋で買ったまま実家の本棚で寝ていた『沖縄経験』1~5号を読んだ。大田昌秀・大江健三郎両氏の編集によるもので、1971年夏から1973年秋にかけて発行された季刊誌である(5号は発行がかなり遅れている)。沖縄…

書評:比嘉康文著『我が身は炎となりて』(新星出版)

1967年11月11日午後5時45分頃、首相官邸正門前で一人の男性がガソリンをかぶり、焼身自殺をはかった。火だるまとなった男性は、虎ノ門病院に急患移送されたが、翌日の午後3時55分、息を引き取った。男性の名は由比忠之進、73歳の弁理士でエ…

大石又七著『ビキニ事件の真実』(みすず書房)

7月3日午後10時からETV特集「大江健三郎 大石又七 核をめぐる対話」が放送された。東京・夢の島に展示されている第五福竜丸の船上で、広島・長崎・ビキニ環礁における被爆※体験や福島の原発事故、戦後日本の原子力への対応などについて、両氏が自らの…

樋口健二氏の2冊の写真集

『隠された被曝労働~日本の原発労働者~』というドキュメンタリー作品を3月25日に紹介した。同作品でレポーターとして被曝労働の実態を追う写真家・樋口健二氏が、1973年から1995年にかけて撮影した写真集である。冒頭部の「崩れゆく風景」とい…

書評:知念ウシ著『ウシがゆく』(沖縄タイムス社)

【2010年11月7日付沖縄タイムス掲載】 本書は沖縄タイムスに連載された「ウシがゆく」を中心に、二〇〇二年以降に書かれた評論やエッセーに新たな書き下ろしを加え、まとめられたものである。「植民地主義を探検し、私を探す旅」という副題が示すように本書…

斎藤貴男著『消費税のカラクリ』を読む

斎藤貴男氏の近刊を紹介したい。 『消費税のカラクリ』(講談社現代新書)は7月20日に出たばかり。菅直人首相の消費税をめぐる発言が有権者の反発を呼び、参議院選挙での民主党の惨敗につながったのは記憶に新しいが、野党・自民党も消費税増税を狙ってい…

書評:田仲康博著『風景の裂け目 沖縄、占領の今』

2010年5月29日付沖縄タイムスの書評欄に掲載されたものです。 1995年6月、著者は17年の米国生活を終えて沖縄に戻る。そこで著者が目にしたのは、80年代から90年代前半にかけて、バブル経済や西銘保守県政、音楽、芸能、サブカルチャーでの沖縄ブ…

菅家利和/佐藤博史『訊問の罠』を読む

大学生時代に帝銀事件の死刑囚・平沢貞通氏の無実を訴え、再審請求を続けていた森川哲朗氏の講演を聴いたことがある。重病に冒され余命は限られていると聞いていたが、平沢氏の冤罪を晴らし、獄中から救い出そうとする執念に打たれた。その後、森川氏の『獄…

書評:サイード・アブデルワーヘド『ガザ通信』

〈日時:2008/12/27(土)12:51 件名:攻撃 攻撃! 何十もの高層ビルが爆撃された。死亡者は120人以上、負傷者は何百人にものぼる。標的になったビルのうち、ひとつは我が家から100メートルのところ、別の10階建てのビルは別方向に1…

辺見庸『私とマリオ・ジャコメッリ』

今年読んだ本の中で強く印象に残った一冊。 マリオ・ジャコメッリのことはこの本で初めて知ったのだが、書店で辺見氏の名を目にして本書を手にしたとき、表紙の写真に目が釘付けになった。釘付けという表現は手垢にまみれたものだが、この写真についていえば…

書評:屋嘉比収『沖縄戦、米軍占領史を学びなおす』

書評:屋嘉比収『沖縄戦、米軍占領史を学びなおす 記憶をいかに継承するか』(世織書房・3800円) 初出:2009年12月5日付沖縄タイムス朝刊 待望の1冊である。著者は近現代思想史を研究しつつ、基地問題や教科書問題など同時代の課題にも積極的に…

『嗚呼 満蒙開拓団』と二冊の本

『嗚呼 満蒙開拓団』を最終日の最終回にやっと見ることができた。観客は残念ながら10名もいなかった。満蒙開拓団全体で27万人といわれる中で、沖縄からは〈成人(集団・集合・分散)移民が1000人前後、満蒙開拓青少年義勇軍が600人前後の送り出し…

平敷兼七写真集『山羊の肺』

10月3日に亡くなった平敷兼七氏の写真集である。あらためてページを繰ってみれば、平敷氏がカメラによって創造した独自の世界が広がっている。特に素晴らしいのが「渚の人々」を中心とした人物写真だ。78ページの「私にジュースをおごってくれた女性〈…

書評:李静和編『残傷の音 『アジア・政治・アート」の未来へ』(岩波書店)

【書評】2009年8月7日付「沖縄タイムス」掲載 六十四年目の沖縄戦慰霊の日が終わり、一週間後には、石川ジェット機墜落事故から五十年の追悼式が行われた。半世紀以上の時がたっても、戦争と米軍が引き起こした事故による犠牲は、体験者に過ぎ去らない…

書評『狙われた「集団自決」』

今年の6月23日(沖縄戦慰霊の日)に栗原佳子著『狙われた「集団自決」』(社会評論社)が出版された。 著者の栗原氏は上毛新聞社、黒田ジャーナルを経て、現在はフリーのジャーナリストとして大阪を活動拠点に「新聞うずみ火」の発行に携わっている。大江…

『他者の苦痛へのまなざし』

大晦日に今帰仁に帰る途中、沿道の桜の木が花を咲かせ始めているのを目にした。今月中旬から下旬にかけて、ヤンバルの桜の名所である八重岳やナングスク、北山城趾では相次いで桜祭りやライトアップが始まる。 実家の裏庭にも幹が一抱えほどある緋寒桜がある…

『あの人は帰ってこなかった』を読む

『父の戦記』より一年ほど前に出された本に菊池敬一・大牟羅良編『あの人は帰ってこなかった』(岩波新書)がある。夫を戦争で失った「戦争未亡人」への聞き取りの記録で、妻・母の銃後の体験を記したものとして、戦後二十年という同じ時期に出された『父の…

『父の戦記』を読む

最近、週刊朝日編『父の戦記』(朝日文庫)を読んだ。文庫本になったのは今年の8月だが、元は1965年に単行本として刊行され、元日本兵の戦争体験記50編が収められている。『週刊朝日』が〈終戦二十周年記念として「父の戦記」を募集〉し、集まった1…

『属国』を読む

最近読んだ本の一つに、ガバン・マコーマック『属国 米国の抱擁とアジアの孤立』(凱風社)がある。題名の「属国」とは日本国家を指す。日本の戦後史や現在の状況を日米関係を中心に分析し、批評した本である。腑に落ちるところの多い、示唆に富む内容だった…

『癒しの島、沖縄の真実』を読む(3)

『癒しの島、沖縄の真実』の第五章は「気分は琉球王国」と題されていて、沖縄独立論について論じられている。その中に次の一節がある。 〈少女レイプ事件の後、早い段階で「独立」を言い出したのはテレビ・ニュースキャスターの筑紫哲也さんだった。朝日新聞…